クラフトビール「常陸野ネストビール」を製造している老舗酒蔵の木内酒造(茨城県那珂市鴻巣、木内敏之社長)は、キリンビールと共同で新たなビールを開発した。
キリンの会員制生ビールサービス「ホームタップ」のオリジナルビールとして12月に発売される。木内酒造で製造された味わいの異なる試作品2種類のうち、どちらかが選ばれる予定。 海外で数多くの賞に輝くクラフトビールを手がける木内酒造と大手が手を握った。
共同開発は、クラフトビールのおいしさを自宅で手軽に楽しんでほしいというキリン側と、個性的で高品質なビールを世界に広めたい木内酒造の思いが合致して実現した。
製造したのは那珂市額田南郷の木内酒造額田醸造所。同社のビール醸造課、宮田輝彦マネージャーが中心となり、オールモルトビールの試作品「X」と「Y」の2種類を手がけた。希少な国産ホップ「IBUKI(イブキ)」をぜいたくに使い、麦芽は主に木内酒造製の「ミカモゴールデン」を採用した。
試作品はともに製造方法が異なるが、どちらも同社のこだわりとビール造りのノウハウを詰め込んだ。同社によると「X」は麦の味わいが強く、コクのあるリッチな仕上がり。
「Y」は常陸野ネストビールの「ラガー」と同じ製法で、さわやかな味わいと柑橘(かんきつ)の香りが特徴という。
新ビールを購入できるのはホームタップの契約者のみ。
ホームタップは自宅で専用サーバーを使い、工場直送の生ビールを楽しむことができるサービス。近所の酒屋やスーパーでは買えないプレミアム商品とすることで、物価高の中で付加価値を高めた。
まだ発売されていない特別なビールをホームタップ会員と共につくるキリンのプロジェクトの一環。
同社から木内側に話を持ちかけたという。ホームタップ会員が本当に飲みたい味を検討し、会員による投票で、ビールのコンセプトを「国産素材の贅沢(ぜいたく)ピルスナー」に決めた。
2種類の試作品のうち、どちらかが本採用となる予定。6月下旬に実施した試飲会の結果を受け、今後、冬の発売に向けて商品化が進む。
木内酒造には、大手会社のビールを飲んでいる消費者へ自社製品をアプローチできる利点がある。
同社の宮田マネージャーは「大手は商品管理が優れており、勉強になる」と共同開発の収穫を話した。
(茨城新聞クロスアイ)