みなさんこんにちは♪
ワインにおける酸化と熟成のお話です。
Tsukuba vinyardでお世話になっております、ワインエキスパートの富山佳一さんがまとめてくださいましたので、どうぞご覧ください。
ワインとコハク酸(succinic acid)の関係についてご説明します。
コハク酸とは
コハク酸は、化学的にはカルボン酸に分類される有機酸で、自然界にも広く存在しています。
特に発酵過程で生成されるため、ワインの中にも含まれる重要な成分のひとつです。酸味だけでなく、独特の旨味やコクを与えるため、ワインの風味に多大な影響を及ぼします。
ワインの発酵とコハク酸の生成
コハク酸は、主にアルコール発酵の過程で生成されます。
酵母がブドウ糖などの糖を分解してエタノールを生成する際、同時にコハク酸や他の有機酸(リンゴ酸、乳酸、酒石酸など)も作られます。
ワインの種類や発酵条件により生成量が異なり、温度や酵母の種類なども影響します。
コハク酸の風味への影響
コハク酸は、ワインに対して特有の「塩味」や「旨味」を与える成分とされています。
甘味や酸味と異なり、コハク酸が加わることで味わいに深みが出て、特に赤ワインにおいて、旨味や複雑な風味をもたらします。
また、苦味や渋味のバランスも整え、より一層まろやかな口当たりに寄与します。
コハク酸の量とワインのスタイル
コハク酸の含有量は、ワインのスタイルや発酵方法によって変動します。
一般的に、発酵温度が高いほど生成されやすくなるため、赤ワインのほうが含有量が多くなる傾向があります。
一方、白ワインでは、酸味が強調されるタイプも多いため、コハク酸が控えめでもバランスがとれます。
テイスティング時のコハク酸の感じ方
コハク酸の影響を味覚で直接認識することは難しいですが、ワインの「旨味」や「ボリューム感」に繋がることが多いです。特に、複雑でコクのある赤ワインを飲む際、コハク酸の存在がより明確に感じられるでしょう。
コハク酸を増やす発酵方法にはどんなものがありますか?
コハク酸を増やすためには、発酵条件や酵母の選択が重要です。
以下の方法がコハク酸の生成を促進する可能性があります。
1. 発酵温度を高める
コハク酸は、発酵温度が高いほど生成されやすい傾向があります。
特に20〜30°C程度の比較的高温で発酵を行うと、酵母がより活発に代謝を行い、コハク酸の生成が促進されます。
ただし、温度が高すぎると他の成分のバランスや風味に悪影響を与える可能性もあるため、管理が重要です。
2. 酵母の選択
特定の酵母株は、コハク酸を多く生成する特性を持っています。たとえば、Saccharomyces cerevisiaeの一部の株はコハク酸生成量が高いことで知られています。
ワイン醸造に適した酵母株を選ぶことで、コハク酸の生成を促進することができます。
特に、非Saccharomyces酵母(ラクトバチルスやクロストリディウムなど)を使った多様な発酵が近年注目されています。
3. 酸素管理
発酵中の酸素供給もコハク酸の生成に影響します。
酵母が酸素にさらされると、コハク酸生成が増加する場合があります。
発酵の初期段階での酸素供給や、開放発酵(酸素が一定量供給される状態)を行うことで、コハク酸が増える可能性があります。
4. 長期発酵
発酵期間を長くすることもコハク酸生成に影響します。
赤ワインのように発酵期間が長い場合、コハク酸の生成量が増えることがあります。
通常、発酵が進むにつれて酵母の代謝が進み、コハク酸の蓄積が増します。
5. 発酵基質の選択
栄養素のバランスが酵母の代謝に影響を与えるため、発酵中の栄養素供給(特に窒素源やアミノ酸)を適切に調整することで、コハク酸の生成を増やすことができます。
また、ブドウ果汁の成熟度や糖度もコハク酸生成に影響を与えます。
6. 副発酵(マロラクティック発酵)との併用
コハク酸は主にアルコール発酵中に生成されますが、マロラクティック発酵(MLF)の影響で全体的な有機酸のバランスが変わることがあります。
MLFによる乳酸菌の活動は直接的にコハク酸を生成するわけではありませんが、酸味や風味に影響を与え、コハク酸の効果が強調されることがあります。
これらの方法を組み合わせることで、ワイン中のコハク酸含量を高めることが可能ですが、他の風味や成分のバランスも考慮する必要があります。
まとめ
コハク酸はワインの風味や味わいの深さを支える重要な成分で、発酵の過程で自然に生成されます。旨味や塩味を引き出す働きがあり、ワインの風味を豊かにする役割を担っています。
次回は、実際にどんなワインがコハク酸が多いかなどを説明させてもらいますね?
ワインエキスパート
つくばヴィンヤードお手伝い人
つくばのお酒をこよなく愛する者